相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産上の権利義務を、法律で定められた相続人が承継することをいいます。預貯金・不動産・有価証券などのプラスの財産だけでなく、借入金や未払金といったマイナスの財産も含まれます。被相続人の死亡と同時に自動的に開始され、相続人は単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択することになります。
配偶者は常に相続人となります。血族相続人は第一順位が子(またはその代襲相続人である孫)、第二順位が直系尊属(父母・祖父母)、第三順位が兄弟姉妹(またはその代襲相続人である甥姪)です。上位の順位者がいる間、下位の順位者は相続人になりません。内縁の配偶者・離婚した元配偶者・いとこは民法上の相続人ではありません。
配偶者と子が相続人の場合は配偶者1/2・子全員で1/2。配偶者と直系尊属の場合は配偶者2/3・直系尊属1/3。配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者3/4・兄弟姉妹1/4です。ただし法定相続分はあくまで目安であり、相続人全員の合意があれば異なる割合で分けることができます。
代襲相続とは、本来の相続人が相続開始以前に死亡していた場合などに、その子が代わって相続する制度です。代襲の原因となるのは、相続開始前の死亡・相続欠格・相続廃除の3つで、相続放棄は代襲原因にはなりません。子の代襲は制限なく再代襲しますが、兄弟姉妹の場合は甥姪までで打ち止めとなります。
相続は、被相続人の死亡によってその瞬間に開始します。死亡時刻が基準となり、死亡届の提出や葬儀の終了を待つ必要はありません。相続の開始時点は、相続放棄や限定承認の3か月の期間の起算点、相続税申告の10か月の起算点など、ほぼすべての期限の出発点となる重要な日付です。
単純承認はプラスの財産もマイナスの財産も無条件に引き継ぐ方式で、3か月の熟慮期間を経過すると自動的に単純承認とみなされます。限定承認は相続で得た財産の範囲内でのみ債務を弁済する方式で、相続人全員での申立てが必要です。相続放棄はすべての権利義務を放棄する方式で、初めから相続人でなかったものとみなされます。
認知された非嫡出子は嫡出子と同じ相続権を持ちます。2013年の民法改正により、非嫡出子と嫡出子の相続分の差別は撤廃されました。養子については、普通養子縁組の場合は実親・養親の双方に対して相続権を持ち、特別養子縁組の場合は養親のみに相続権を持ちます。
相続分の譲渡は法律上認められています。遺産分割協議が成立する前であれば、自分の相続分を他の共同相続人や第三者に譲渡することができます。ただし相続放棄とは異なり、相続分の譲渡では債務は免れない点に注意が必要です。
原則として3か月を経過すると相続放棄はできなくなります。ただし、被相続人に相続財産が全くないと信じており、かつそう信じるにつき相当の理由がある場合には、債務の存在を知った時から3か月以内であれば相続放棄が認められる可能性があります。期限が迫っている場合は早急に弁護士に相談することをおすすめします。
はい、相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされるため、相続権は同順位の他の相続人、または次順位の相続人に移動します。たとえば子全員が相続放棄をすると、次順位の直系尊属(親や祖父母)に相続権が移ります。多額の借金を理由に相続放棄をする場合は、想定される全ての相続人に事前に連絡し、必要であれば同時に全員で放棄手続きを進めるのが実務上の王道です。
相続財産の全部または一部の処分、3か月の熟慮期間の経過、相続財産の隠匿・私的消費などが法定単純承認に当たります。たとえば預金を解約して生活費に使った、不動産を売却したといった行為は処分とみなされる可能性があります。相続放棄を予定している場合は、遺産に一切手をつけないことが原則です。
離婚した元配偶者には相続権はありません。離婚により法律上の婚姻関係が解消されているため、被相続人との親族関係は消滅しており、相続人の地位を失います。ただし元配偶者との間に生まれた子は、親権者や同居の有無にかかわらず、実子として第一順位の相続権を持ちます。
法律上の配偶者ではないため相続権はありません。遺言書による遺贈、生前贈与、生命保険の受取人指定、特別縁故者制度(相続人不存在の場合)で対応します。内縁関係を保護するためには、生前に公正証書遺言を作成しておくことが最も確実な方法です。
現行法では法定相続権はありません。遺言書による遺贈、生命保険の受取人指定、養子縁組、家族信託などで財産を残すことが可能です。パートナーシップ制度が整備されている自治体でも、現時点では相続権は付与されていないため、生前の法的手当てが不可欠です。
親権者が代理しますが、親権者自身も相続人の場合は利益相反となり、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。特別代理人が未成年の代わりに遺産分割協議に参加し、未成年者の利益を守ります。
相続財産清算人が選任され、官報公告を経て債権者弁済、特別縁故者への分与(内縁配偶者、療養看護者等)を行い、残余は国庫に帰属します。特別縁故者として分与を受けるには、相続財産清算人による公告期間満了後3か月以内の申立てが必要です。
法定相続人がいない場合に、被相続人と特別の関係(生計同一、療養看護、特別な縁故)にあった者が、家庭裁判所の審判により相続財産の分与を受けられる制度です。内縁の配偶者や長年介護した人などが該当します。
欠格は法定の重大事由(故意殺害、遺言妨害等)で自動的に相続権喪失。廃除は被相続人の意思で家庭裁判所に申し立てて認められるもの(虐待、重大な侮辱等)です。欠格の場合は代襲相続が発生しますが、相続放棄の場合は代襲相続は発生しません。
同時に死亡した(と推定される)者の間には相続が発生しない制度です。交通事故や災害で親子が死亡した場合の相続関係整理で重要です。どちらが先に死亡したか不明な場合は同時死亡と推定され、互いに相続しないことになります。
胎児は「既に生まれたものとみなす」ため相続権があります(民法886条)。ただし死産の場合は遡及的に相続権を失います。遺産分割は出生まで待つのが安全で、胎児の法定相続分を確保した上で協議を進めます。