相続人の範囲と法定相続分を国税庁の公式情報に基づき徹底解説。配偶者・子・父母・兄弟姉妹の相続順位、具体的な相続割合、代襲相続のルール、内縁や放棄のケースまで実例付きで分かりやすく紹介します。
相続人の範囲と法定相続分とは何か
相続が発生した際、誰がどの程度の財産を受け継ぐのかは民法によって明確に定められています。相続人の範囲とは、故人の財産を相続できる権利を持つ人の対象を指し、法定相続分とは各相続人が受け取る財産の割合を示します。この仕組みを正確に理解することで、相続トラブルを未然に防ぎ、スムーズな遺産分割を実現できます。
相続人の範囲は配偶者を中心に、子、父母、兄弟姉妹という順位で決定されます。配偶者は常に相続人となり、他の親族は優先順位に従って相続権を得ます。法定相続分は配偶者と誰が相続人になるかによって異なり、配偶者と子の場合は各2分の1、配偶者と父母の場合は配偶者3分の2で父母が3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者4分の3で兄弟姉妹が4分の1となります。
令和7年4月1日現在の民法第887条、889条、890条、900条の規定に基づくこれらのルールは、相続税の計算や遺産分割協議の基礎となる重要な知識です。
配偶者の相続権|常に相続人となる特別な地位
故人の配偶者は、他の相続人の有無や順位に関わらず、常に相続人となる特別な地位を持ちます。これは婚姻関係によって築かれた経済的共同体を保護するための民法の基本原則です。配偶者が相続人から除外されるケースは、離婚によって婚姻関係が解消された場合や、相続放棄を自ら選択した場合のみとなります。
配偶者の相続分は、共に相続する他の相続人の順位によって変動します。子と共に相続する場合は2分の1、父母と共に相続する場合は3分の2、兄弟姉妹と共に相続する場合は4分の3を受け取ります。配偶者以外に相続人がいない場合は、配偶者が全財産を相続することになります。
民法上の配偶者とは、正式に婚姻届を提出して法律婚の関係にある者を指します。長年連れ添った事実婚や内縁関係のパートナーは、どれほど生活実態が夫婦同然であっても、法定相続人には含まれません。内縁の配偶者が財産を受け取るには、遺言書による遺贈や生前贈与などの別の手段が必要となります。
第1順位の相続人|子供とその代襲相続
配偶者以外の血族相続人の中で、最も優先されるのが故人の子供です。子供が存在する限り、第2順位の父母や第3順位の兄弟姉妹は相続人になることができません。この「子」には、実子だけでなく養子も含まれ、法律上は同等の相続権を持ちます。
子供が故人より先に亡くなっている場合、その子供の直系卑属(孫やひ孫など)が代わって相続人となります。これを代襲相続といいます。代襲相続は子の系統では無制限に続きます。孫も既に死亡している場合は、さらにひ孫が相続人となります。ただし相続放棄をした人の子は代襲相続できません。
嫡出子と非嫡出子の相続分については、平成25年の民法改正により差別が撤廃され、現在は同等の権利を持ちます。民法上、養子縁組によって法的な親子関係が成立した養子は、実子と全く同じ相続権を持ちます。
第2順位の相続人|父母・祖父母などの直系尊属
第1順位の相続人である子や孫などの直系卑属が一人もいない場合に限り、第2順位の直系尊属が相続人となります。直系尊属とは、故人の父母、祖父母、曾祖父母など、直接の血縁で上の世代にあたる人々を指します。
直系尊属が相続人となる場合、配偶者がいれば配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1を相続します。父母と祖父母の両方が存命の場合、故人により近い世代である父母が優先されます(親等の原則)。父母のどちらか一方でも存命であれば、祖父母は相続人になりません。
第3順位の相続人|兄弟姉妹とその代襲相続
第1順位の子や孫、第2順位の父母や祖父母がすべていない場合に限り、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1を相続します。
父母の一方のみを同じくする半血兄弟姉妹は、父母の双方を同じくする全血兄弟姉妹の2分の1の相続分となります。兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで、甥・姪も死亡している場合、その子(故人の大甥・大姪)は代襲相続できません。
兄弟姉妹は法定相続人ではありますが、遺留分の権利は認められていません。そのため故人が遺言で「全財産を第三者に遺贈する」と指定した場合、兄弟姉妹は一切相続できません。
法定相続分の具体的な計算と実例
【ケース1:配偶者と子2人】遺産総額1億円の場合、配偶者が5,000万円(2分の1)、長男が2,500万円、次男が2,500万円(残りの2分の1を均等分割)となります。
【ケース2:配偶者と全血兄2人、半血妹1人】遺産総額8,000万円の場合、配偶者が6,000万円(4分の3)、兄がそれぞれ800万円ずつ、妹が400万円(残りの4分の1を全血2:半血1の比率で分割)となります。
法定相続分は相続人間で遺産分割の合意ができなかった場合に適用される基準であり、必ずしもこの割合で分割しなければならないわけではありません。相続人全員の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることも可能です。
相続放棄と相続人の範囲への影響
相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に申述することで、その相続について初めから相続人でなかったものとされる制度です。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しません。相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
同順位の相続人全員が相続放棄した場合、次順位の相続人が相続権を得ます。例えば子全員が相続放棄すると第2順位の父母が、父母もいない場合は第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。債務超過の場合に子が相続放棄したことで、高齢の父母に相続権が移り、知らないうちに債務を負担してしまうケースがあります。
相続放棄をした人の子は代襲相続できません。これは相続放棄が「初めから相続人でなかった」ことになるため、代襲すべき地位が存在しないと考えられるからです。一度家庭裁判所に受理された相続放棄は、原則として撤回できません。
相続税の計算と法定相続分の関係
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。この「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含まれます。ただし養子の数には制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか法定相続人の数に算入できません。
相続税の総額を計算する際は、まず課税遺産総額を法定相続分で按分したものとして各相続人の税額を算出し、それらを合計します。この計算は実際の遺産分割割合とは無関係に、あくまで法定相続分に基づいて行われます。
配偶者には配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで非課税)があるため、法定相続分の範囲内で相続すれば多くの場合相続税がかかりません。ただし二次相続(配偶者が亡くなった時の相続)も考慮した総合的な検討が必要です。
よくある質問全10問
Q. 配偶者は必ず相続人になりますか
はい、法律婚の配偶者は他の相続人の有無に関わらず常に相続人となります。ただし正式な婚姻届を提出していない内縁関係の場合は相続人になりません。また離婚した元配偶者や、自ら相続放棄をした配偶者は相続権を失います。配偶者の相続分は共同相続人の順位によって2分の1から4分の3まで変動します。
Q. 子供が先に亡くなっている場合は誰が相続しますか
子供が被相続人より先に亡くなっている場合、その子供の直系卑属である孫が代襲相続します。孫も亡くなっていればひ孫が代襲し、この代襲相続は無制限に続きます。ただし相続放棄をした人の子は代襲相続できません。
Q. 法定相続分と違う割合で遺産を分けることはできますか
はい、相続人全員の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することが可能です。法定相続分は相続人間で合意ができなかった場合の基準であり、必ずこの割合で分けなければならないわけではありません。ただし遺留分を侵害する内容には注意が必要です。
Q. 相続人の範囲はどうやって確定しますか
相続人の範囲は被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得することで確定します。この戸籍調査により配偶者の有無、子の存在、養子縁組の有無、先に亡くなった子がいる場合の孫の存在などが判明します。法務局で法定相続情報一覧図の認証を受けると、その後の相続手続きが簡便になります。
Q. 兄弟姉妹と甥姪が同時に相続人になることはありますか
はい、あります。兄弟姉妹の一部が既に亡くなっていて、その子である甥姪がいる場合、存命の兄弟姉妹と甥姪が共同で相続人となります。ただし甥姪も亡くなっている場合、その子は代襲相続できません。
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