代表的な方法は、暦年贈与と相続時精算課税制度です。暦年贈与は、年110万円までの基礎控除を活用して毎年計画的に贈与する方法で、長期間続けることで相続財産を大きく減らせます。2024年以降、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に持ち戻されるルールに段階的に移行しており、早期からの実行が前提となりました。このほか、教育資金の一括贈与(1500万円まで非課税)、結婚・子育て資金の一括贈与(1000万円まで非課税)、住宅取得等資金の贈与(最大1000万円非課税)、配偶者への居住用不動産の贈与(2000万円まで非課税)などの特例制度も活用できます。
家族信託は、財産の管理・処分を信頼できる家族に託す仕組みで、2006年の信託法改正により民事信託として利用が広がっています。財産を持つ人(委託者)が、家族(受託者)に財産の名義を移して管理を任せ、その利益は自分や指定した人(受益者)が受け取る構造です。認知症による財産凍結対策、賃貸不動産の管理承継、障害のある子の生活保障、事業資産の段階的承継など、成年後見制度や遺言では実現しづらい柔軟な設計が可能です。公正証書による契約書の作成が一般的で、不動産が含まれる場合は信託登記も行います。
法定後見は、既に判断能力が低下した人のために、家庭裁判所が後見人を選任する制度で、本人や家族が後見人を自由に選ぶことはできません。財産管理の方針も裁判所の監督下で保守的に運用されます。任意後見は、判断能力が健在なうちに、将来の後見人と契約を結び、公正証書で契約書を作成しておく制度です。実際に判断能力が低下した時点で家庭裁判所に申し立てを行い、任意後見監督人が選任されて契約が発効します。後見人を自分で選べること、財産管理の方針を契約で柔軟に定められることが大きな利点です。
祖父母などから30歳未満の子・孫に対して、教育資金として一括贈与する場合、受贈者1人あたり1500万円まで贈与税が非課税となる制度です(学校以外の習い事などは500万円が上限)。金融機関に教育資金口座を開設し、贈与者が資金を拠出、受贈者が教育関連支出の領収書を提出して払出しを受ける仕組みです。受贈者が30歳に達した時点で残額があれば贈与税が課税されます。また、贈与者が贈与後7年以内に死亡した場合、受贈者が23歳未満などの一定要件を満たさない限り、残額が相続財産に加算される扱いとなっています。
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与した場合、基礎控除110万円に加えて2000万円までが贈与税非課税となる制度で、「おしどり贈与」とも呼ばれます。同じ配偶者からの贈与で1回のみ利用でき、贈与を受けた年の翌年3月15日までに受贈者が実際に居住し、その後も居住を続ける見込みであることが要件です。2019年の民法改正により、この特例で贈与された居住用不動産は遺産分割の際の持ち戻し計算から除外される推定が働くようになり、配偶者の居住権保護が強化されました。
2020年4月から新設された制度で、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について、配偶者が終身または一定期間、無償で居住できる権利です。配偶者は建物の所有権を取得しなくても住み続けられるため、所有権は他の相続人(たとえば子)が取得し、配偶者は居住権だけを取得するといった柔軟な分割が可能になります。これにより、配偶者の居住の安定と、遺産分割における他の財産(預貯金など)の確保を両立できます。設定には遺言・遺産分割協議・家庭裁判所の審判のいずれかが必要です。
理想的には、判断能力が十分に健在で、家族間の対話も冷静に行える60歳前後から始めるのが望ましいとされます。ただし「早すぎる」ということはなく、子が生まれた段階、マイホームを購入した段階、事業を承継した段階など、人生の節目ごとに見直すのが現実的です。特に生前贈与は、2024年改正により相続開始前7年の持ち戻しルールが適用されるため、時間をかけた計画的な実行が前提となりました。まずは財産目録の作成から始め、現状を把握した上で、遺言・贈与・信託・保険を組み合わせた総合的な設計を進めるのが効果的です。
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