トラブルの典型例としては、特別受益(生前贈与)の主張、介護負担の不均衡に対する寄与分の主張、自宅や事業用資産の帰属争い、使途不明金の問題、遺言の有効性を巡る争い、連絡の取れない相続人の存在、認知症の相続人の参加問題などが挙げられます。家庭裁判所の司法統計によれば、遺産分割調停の7割以上が遺産総額5000万円以下で発生しており、金額の問題ではないことが数字からも読み取れます。対策の第一歩は、早期に専門家を介在させ、感情と法律を切り分けて議論する場を作ることです。
認知症などで判断能力を欠く相続人がいる場合、その人を単独で遺産分割協議に参加させることはできません。判断能力の程度に応じて、家庭裁判所に成年後見人・保佐人・補助人の選任を申し立てる必要があります。成年後見人が選任されれば、後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加します。ただし、後見人は本人の利益を守る立場にあるため、本人の法定相続分を下回るような不利な合意には応じられず、分割の柔軟性が制限されます。
被相続人の生前、同居していた相続人などが預金を引き出し、使途が不明なケースは「使途不明金問題」と呼ばれ、遺産分割の典型的な紛争類型です。まず、金融機関から過去の取引履歴(10年分程度)を取り寄せ、引き出しの時期・金額・頻度を把握します。被相続人自身が使用していたのであれば問題ありませんが、相続人が自己のために使用していた場合は、不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権を遺産として扱い、遺産分割で清算することになります。
遺言書の偽造・変造が疑われる場合、遺言無効確認訴訟を地方裁判所に提起することで争います。筆跡鑑定、作成時の状況に関する証言、被相続人の病状や判断能力に関する医療記録などを総合的に証拠として提出し、遺言の有効性を争います。自筆証書遺言は筆跡が問題になりやすく、鑑定結果によっては偽造が認定されるケースもあります。公正証書遺言の場合、公証人の関与と証人2名の立会いがあるため偽造は困難ですが、作成時の判断能力を争う訴訟は存在します。偽造が認定されれば、その遺言者は相続欠格となり、相続権を失う可能性もあります。
2023年4月施行の民法改正により、相続放棄者の財産管理責任が大きく見直されました。改正後は、相続放棄した時に現に占有している相続財産についてのみ、次順位の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務を負うと整理されました。占有していない財産については管理責任を負わないことが明確化され、遠方の不動産などについての負担は軽減されています。
遺産分割調停は、家庭裁判所で行われる話し合いの手続きです。申立人が家庭裁判所に申立書と必要書類を提出し、裁判所が相手方に書類を送付して、第1回調停期日が指定されます。期日には申立人と相手方が別々の待合室に通され、中立的な調停委員2名が交互に双方の話を聞きます。直接対面する機会は基本的になく、感情的な衝突を避けやすい設計です。調停は月1回程度のペースで数回から十数回行われ、合意が整えば調停成立となり、調停調書が作成されます。
相続問題の弁護士費用は、事件の性質と事務所の料金体系により幅があります。一般的な相場としては、着手金が20万円から50万円、報酬金が経済的利益の5パーセントから15パーセント程度です。遺産分割協議のみであれば数十万円規模、調停・審判・訴訟にまで進むと数百万円規模になることもあります。多くの事務所で初回無料相談を実施しており、見積もりを複数から取ることも可能です。
最も効果的なのは、遺言書の作成、特に公正証書遺言または法務局保管制度を利用した自筆証書遺言の作成です。遺留分にも配慮した設計が理想です。次に、財産目録の作成と家族への共有、生前贈与の計画的活用、家族信託や任意後見契約の整備、生命保険を活用した代償分割原資の準備などが挙げられます。これらの技術的な対策に加え、家族間の対話が最も重要です。「誰に何を残すか」という決定だけでなく、「なぜそう決めたか」という背景を生前に言葉にして家族に伝えることで、相続発生後の納得感が大きく変わります。
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